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自動車や電気製品と同じように、私たちの体もエネルギーを使って動いています。このエネルギーとして、西洋医学ではATP(アデノシン三リン酸)、東洋医学では正気(せいき)と呼ばれるものを考えています。
以前の記事でATPと正気の成り立ちなどを見てきました。今回は正気に注目して、その特徴について考えてみたいと思います。
正気には次のような特徴があります。
- 正気は必要とされる所に移動して、その場所で使われる
- 体は正気を分け合って動いている
正気が移動するというのはどういうことでしょうか。また正気を分け合うとは、何が起こっているのでしょうか。
私たちの体を動かすエネルギー(ATPと正気)について
以前の記事でATPと正気についてまとめました。
ここではまず、その内容を見直してみたいと思います。
体を動かすエネルギーとして、西洋医学ではATP、東洋医学では正気と呼ばれるものを考えます。これらは異なるものですが、似ている所が多くあります。
- 食べ物から作られる
- 全身へ配られる
- それぞれの場所で、合成されたり変化したりして消費される
- 使われることで体が正しく動く
ATPは食べ物から得られた栄養素から作られます。全身に行き渡った栄養素は、それぞれの細胞で加工されてATPが作られれます。そして作られたところで使われます。
正気は生き物のもつ生命エネルギーで、食べ物に多く含まれます。正気は食べ物から直接取り出されて、経絡(けいらく)というルートを通って全身へ行き渡ります。そしてその場所で使いやすいものに変化して消費されます。
どちらも体を正しく動かすために必要なもので、健康のためには不可欠です。
正気の特徴
正気は自由に動きます
ここからは正気の特徴について見ていきます。
- 正気は自由に移動する
- 正気は必要なところへ移動して、変化して使われる
ATPは作られたところで使われますが、正気は必要なところへ移動して、そこで変化して消費されるという特徴があります。
まず、食べ物から取り込んだ正気は全身へ配られて、その場所で使いやすいものに変化します。たとえば心臓では心気(しんき)と呼ばれるものに、胃では胃気(いき)と呼ばれるものに変化します。
通常はそのままその場所で使われますが、ほかの場所で正気が必要になると、そちらに移動するのです。
たとえば食事を多く食べ過ぎて、胃を活発に動かさなくてはならなくなったとします。すると体の他のところから正気が移動してきて、胃気に変化して足りない分を補うのです。
このように、正気は体で必要となったところに自由に移動して使われるという性質があります。
正気が移動するということは
「正気は必要なところへ自由に移動する」ということをもう少し深く考えてみると、次のようなことが分かってきます。
- 全身に配られた正気は、必要に応じて再分配される
- 体は正気を分け合っている
体の中で、活発に動いているところは正気が多く必要になります。一方そうでないところは正気に余裕があるものと思われます。正気は自由に動きますので、この余った正気は、必要とされるところへすぐに移動していきます。
このように正気は一度全身に配られたあと、余裕があるところから必要なところへ再分配されるのです。
また、体の中にある正気は食事をしない限り増えませんので、全身の正気の量は限られています。つまり限られた正気を、必要な所には多く、そうでない所には少なく分配して、体全体が動いていることになるのです。
このように体は正気を分け合って動いているのです。
正気を分け合う優先順位
必要な所には優先的に送っています
正気の分配には優先順位のようなものがあると思われます。
- 脳・内臓など(生命を維持するために最低限必要なところ)
- 自律神経・ホルモン器官・免疫系など(体の調整や修復をしているところ)
- 消化・吸収・解毒・生殖器など(必要に応じて活発に動くところ)
- 筋肉・思考(脳)など(動かそうと思って動かすところ)
注)この図はイメージであり、実際の正気の量を表すものではありません
まず、体は生命活動のために最低限動かさなくてはならないところに、優先的に正気を送っています。
脳や心臓、肺や腎臓などは絶えず動いていて、こういったところはいつも正気を必要としています。西洋医学では基礎代謝と呼ばれるところに相当します。
次に、健康を維持するための様々な調整(自律神経や内分泌(ホルモン)など)や、病原菌などから体を守る働き(免疫系など)、また傷ついた部分の修復などの働きに正気を優先して送っていると思われます。
そして次に、消化器や月経など、必要なことが起こった時に活発に動くところに正気を回しています。
最後に正気が送られるのは、私たちが何かをしようとして動かしているところです。歩く、走るなどや、頭を使って何かを考える、仕事をするなどです。これらは生命の維持に直接関わりませんので、優先順位が低くなるものと思われます。
このように私たちの体は、生命の維持に直接関係するところ(1と2)に正気を優先的に送り、次に生命維持に関わりますが、いつも動いているわけではない部分(3)を優先し、最後に私たちの意思で動かすところ(4)に正気を送るようにしているのです。
優先順位があるので、こんなことが起こります
このように体は優先順位にしたがって正気を分配しています。ところが体全体の正気の量は限られていますので、場合によっては正気が足らない部分が生じて、困ったことが起こります。
例えば次のような場合です。みなさんも経験されたことがあるのではないでしょうか。
- とても激しい運動のあとは、食事を受け付けない
- 考え事をしすぎると、消化が悪くなる
- 体調が悪いときは、何もしたくなくなる
マラソンなど非常に激しい運動をすると、筋肉などで正気を多く消費するため体全体の正気が少なくなります。正気が減っていても生命活動の維持(1と2)には優先的に正気を送りますので、消化器(3)へ回ってくる正気が少なくなります。すると消化器の動きが悪くなって、食事を受け付けなくなるのです。
考え事(4)で正気をたくさん使ってしまった場合でも、同様に消化器(3)へ正気が十分回らなくなり、消化器の動きが悪くなります。
また体調が悪いときは多くの正気を生命維持(1と2)に回すことになり、他の部分に正気がまわせなくなります。するとなにもする気が起きなくなるのです。
体は正気を分け合っていて、その分配に優先順位があるために、このようなことが起こるのです。
まとめ
ここまで正気が移動することや、体が正気を分け合うことなどを見てきました。
- 正気は必要な所に移動して消費される
- 体は正気を分け合って動いている
- 正気の分配には優先順位がある
「正気を分け合うこと」「正気の分配の優先順位」などは、東洋医学でさまざまな症状を見ていくときの、基本的な考え方となります。
体全体の正気の量や、優先順位を意識して、全身にバランスよく正気が行き渡るようにしていくことが大切です。それによって体調や健康の維持が、シンプルで分かりやすいものになっていきます。
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